コロナ時代における診断士の役割
中小企業診断協会北海道
会長 山崎記敬
北海道協会会員の皆さまには、日ごろから専門家等として協会事業への参画をいただきありがとうございます。また、関係機関の皆様には、北海道協会所属診断士と連携した中小企業支援活動にご理解ご協力を賜りまして感謝いたします。
さて、新型コロナウイルスについては、昨年1月に道内で初めて感染者が確認されてから、1年半以上が経過しましたが、いまだ感染者の増加に歯止めがかからず、道内中小企業の経営への影響についても甚大かつ先行きが見通せない状況が続いております。
国や道、札幌市をはじめ道内自治体においても、新型コロナウイルスにより経営に影響を受けた中小企業に対する各種支援策を打ち出していますが、観光やイベント、飲食など、人の往来が関わる事業や大人数が集まる事業は、引き続き大きな影響が避けられない状況となっています。
そのような緊急事態の中、私達北海道協会の診断士には支援活動の中心的な担い手としての役割が求められていると考えておりますが、各種公的施策の推進役となる診断士の人数が圧倒的に不足にしていると感じています。
例えば、中小企業庁にて予算措置されている事業再構築補助金は予算規模1.1兆円の大型事業で、道内でも1000社程度が活用すると思いますが、当事業を活用した経営支援に対応できる診断士は北海道協会の会員約220名のうち数十名程度ではないかと考えています。
北海道協会においても、4月1日に会員向けに事業再構築補助金の勉強会を開催し、約70名に参加していただきましたが、事業規模に比べると、対応できる人数は限定的と言わざるを得ません。つまり、各種支援施策の事業規模に比して、現場で実際に支援できる診断士の人数は圧倒的に不足しており、道内中小企業からの相談ニーズに十分に応えられていない可能性があるということになります。そのための解決策の方向性として、関係機関の皆様との連携による経営支援体制を構築して相談ニーズに応えていくということが重要ではないかと考えております。
また、この新型コロナウイルスがもたらした緊急事態によって、中小企業からの相談ニーズや支援ニーズがより明確かつ緊急的になり、診断士に求められる役割や提供する価値についても、深く考えさせられる状況となっていると感じています。
先日図書館で時間があった際に「会社を救うプロ士業 会社を潰すダメ士業(横須賀輝尚著)※」という本を偶然手に取って読んだのですが、この本の第1章「士業は金のなる木にも毒にもなる」に書かれている内容は、昨年新型コロナウイルスの感染拡大初期の頃に私が感じたことと非常に近いものでした。
※(補足)私は普段この手の本は読まないのと、第1章以外の部分は深く読んでいないため、この本自体をお勧めするものではありませんが、それでもご興味ある方は是非第1章を読んでみてください。
要は、昨年の新型コロナウイルス感染拡大時に起こった出来事から、関わる士業によってプラスにもマイナスにもなること、顧問たる士業は聞かれる前に自ら考え提案してくれることなど、士業の活動内容如何によって、中小企業の経営に大きな影響を与えるということが書かれています。
恐らく、本に書かれている内容は、主には税理士や社労士に関する内容だと思いますが、昨年北海道協会に寄せられた相談ニーズにおいても同様の事案が多数あり、同じ士業として、私達診断士にとっても同じことが言えるかと感じています。
診断士の主な業務として窓口相談や専門家派遣がありますが、このような「相談があったら対応する」という支援プロセスでは、今回の緊急事態時には有効に機能しづらいという面があったかと思います。
今後は、診断士が多くの中小企業と日常的にコミュニケーションを取り、緊急事態時には、相談を受ける前に、自ら考え、支援策を提案して、実際に伴走支援まで行うような支援プロセスを構築できるよう、私達のマインドも変えていく必要があるのではないかと考えさせられる内容でした。
最後になりますが、新型コロナウイルスの影響は未だ多くの道内中小企業の経営にも影響が及んでおり、北海道協会としては、支援者たる私達診断士が一丸となり、まずは目の前の経営支援に全力を注いでいくことが大事であると考えていますので、様々な課題はありますが、引き続き連携体制を強化してこの難局を乗り切ることができるよう、より一層のご協力をお願い致します。