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診断北海道 47号 2021年9月発行

「やれば・・できる」

2021年9月24日理事会からの発信

中小企業診断協会北海道
副会長 細田行洋

診断北海道もいよいよWEB配信となるということで、ITへの転換がどんどん進んでいき、紙媒体が廃れて(?)いくという、これも時代の流れが実感されます。

さて、2021年8月現在、東京オリンピックが閉幕しパラオリンピックが開催されようとする時期に本稿を執筆していますが、新型コロナ感染症(特にデルタ株)が益々隆盛となりつつあるのは企業経営にも大きな影を落としています。そのような中でも、事業者様が何とか影響を抑えようと頑張っておられる姿を見ると、頭が下がる思いです。つい先日も地方に出張中、ばったり出会った事業者様から「是非寄ってもらいたい」との要望を受けました。その時経理担当の奥様もご一緒だったのですが、どうしても見てもらいたいものがあるとのことで、時間を取り訪問させていただきました。なお、事業者様の具体的な事業内容につきましては伏せさせていただきます。分かりづらい点があるかと思いますがご諒承ください。

この事業者様は、4年前に親族内事業承継によって3代目社長として経営に当たっておられます。3代目は承継前に専務として事業経営に携わっていましたので、事業内容の承継について全く問題はありませんでした。ただし事業承継時にご多分に漏れず多少のいざこざがあり、会計事務所を変更することになって会計に担当者が必要となり、3代目の奥様に手伝っていただくことになりました。新しい会計事務所の先生の丁寧なご指導、および奥様の意識の高さもあって、現在は奥様ご自身で月次試算表を作成できるまでになり、3代目の金庫番として活躍されています。

私が訪問した際にご丁寧にも過去3期分の決算書(8月決算)及び当年度の最新の試算表のコピーを用意されていました。実は事業承継後の売上高は順調な伸びを見せていましたが、赤字決算が継続し、新型コロナ感染症の影響がでた前期決算では債務超過が目前に迫るというところまで落ちこんでいました。ところが、本年度の決算前の試算表では、減価償却も加味したうえで当期純利益が大幅な黒字となっており、繰越欠損を半分以上解消する勢いです。まさにコロナ禍にあってV字回復(の途中)となっています。奥様がどうしても見せたいものがこれでした。私もびっくりして、「これは素晴らしい!」を思わず連発しました。それからなぜV字回復ができたのかいろいろとお聞きしました。要点を整理しますと、

  • コロナの影響があった売上高は期待できるが利益率の低い分野を絞り込んだこと。
  • 利益率の高い分野で取引先が困っていたことを引受けたこと。そのことも影響し新規開拓がスムースにできたこと。
  • 利益率の高い分野で効率的なオペレーションへの転換を工夫したこと。

また、既に決算月になりほぼ今期の状況は把握できていますので、従業員に決算ボーナスを支給したそうです。従業員の方はコロナ禍でまさかボーナスをもらえるとは思っていなかったようで大変喜ばれたようです。3代目は、事業承継直後は事業意欲が旺盛で大きな投資などを考えていましたが、結果的には身の丈に合った経営、その中で如何に利益を増やしていくのかが重要だということをこのコロナ禍で考えさせられた、とおっしゃっていました。そういう姿は一段と立派になった経営者として私には映りました。

私はこの事業者様には直接係わっていませんが、優秀な診断士先生が係わっていらっしゃいます。その先生の支援の賜物だと感じています。どこまで続くかわからないコロナ禍は、ある意味経営者をレベルアップさせる機会として捉えることができるのでは、思っています。診断士として様々な支援の仕方があると思いますが、最終的には事業者様が豊かになること、事業者様が豊かになれば従業員も豊かになれます。それが地域の豊かさにもつながるのではないでしょうか。事業者様が豊かになることが地域の発展に貢献できるもの思います。コロナ禍の中で事業者様が豊かになるような支援を診断士として心掛けていただければと願っています。

診断北海道 47号 2021年9月発行