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診断北海道 48号 2022年2月発行

新企画! 札幌圏「以外」のリアルな事情

2022年2月9日その他

広報情報委員会
船越 誠

でっかい「道」のあっちはどう?

広い広い北海道。その面積たるや九州と四国を足したよりまだ北海道が上回るという、全国の他の都府県にはない特徴を備えています。

並みの県なら2つも3つもまたぐくらい距離が遠いんだから、エリアごとに事情がいろいろと違うはず。
でもなかなか「自分の住んでいるマチ」以外の情報は手に入りにくいというのが正直なところかと思います。

そこでこのたび広報情報委員会では、「札幌以外を拠点に活動する診断士から、土地土地のナマの情報を聞こう!」という企画を立案しました。

第1回は広報情報委員会のメンバーでもあり、函館を拠点に活動している私こと船越から、函館をはじめ道南エリアのリアルな状況をお伝えします。

観光はコロナで大打撃、高級シティリゾートは何とかなっているけれど

函館の主要な産業は、なんといっても観光業。コロナ禍でとてつもない打撃を受けた産業です。

コロナ前の2019年までは海外(特にアジア圏)からの観光客数が順調に伸び、今後一層の期待を集めていただけに、ダメージも大きかった印象です。

来函観光客はコロナで4割減!
引用:令和3年度(2021 年度)上期来函観光入込客数推計
https://www.city.hakodate.hokkaido.jp/docs/2015062500021/files/R3kamikiirikomi.pdf

東京オリンピック後の注目の高まりを見据えて新設・リニューアルされたホテルも数多く、中には開店休業状態が続いている施設も。

こうしたホテルにとっては、春の「はこだて割」が福音となりました。

観光客にとっては魅力的な都市型リゾートホテルも、市民にとっては高嶺の花。泊まってはみたいものの地元のホテルにそこまでのおカネは…と思っていた市民がこの割引制度を利用して有名ホテルに宿泊し、おかげでホテルも何とか食いつないだ、という構造です。

しかし中~低価格帯のビジネスホテル・カプセルホテルなどはそうした需要を取り込むことができず、あえなく廃業したところも…というのは全国の観光地と同様。

原稿執筆時点(2021年末)では道内や青森などからの観光客がそれなりに増え、クリスマスの観光地などは「賑わっている」と言って差し支えない状態でした。

イカが獲れない! 代わりにブリだ‼

観光地としての函館の魅力を高めているのが「北海道のおいしい海の幸」。

しかし道民の皆さんならご存じのとおり、往時の名物「イカ」がぜんぜん獲れていません。スルメイカの水揚げ量は10年前の1/20にまで減少したというから大変です。

その代わりに急浮上しているのが「ブリ」。最初はマグロやサケに混ざって獲れていた程度だったそうですが、近年ついにイカを上回る量に。

これを受けて「函館ブリフェス」というイベントを開催したり、地元スーパーや飲食店等で「ブリカツ」を販売するなど、ブリ食普及への取り組みが行われています。

またイカ一辺倒だった水産加工業者などには魚種転換を促す補助金制度があったり、話題の事業再構築補助金を使って魚種転換を図った事業者もあるそうです。

わかりやすい市電・わかりにくいバス

函館市民が「マチの課題だ」と口をそろえるのが公共交通の問題。

函館には市電がありますが、市電で行けるのは西部地区から五稜郭公園を経て湯の川エリアまで。

この辺りはいわゆる「旧市街」で、観光客に人気の歴史的な街並みと温泉地を結んでいる点で便利と言えなくはないんですが、生活者が利用する施設はあまりないんです。

大きな病院や買物の目的地があるエリアにつながっていないんですね。

若いファミリー層が多く住むのは市内北西部から北斗市にかけてで、ロードサイド型の大型店もそちらに集中しています。結果的に旧市街の住民もクルマでそっちに流れるようになってしまったため、駅前エリアの空洞化が問題になっています。

市電の通っていないエリアには路線バスがしっかりカバーしてくれてはいるんですが、これがものすごく複雑というのも困りもの。

何しろ函館は地形的に「扇」の形に広がっているため、扇の要の部分にある函館駅周辺から市内主要エリア・「郡部」と呼ばれる南茅部や戸井・森町や福島町など近郊の都市行きまで、近距離長距離あらゆるバスが出ているんですね。

超難易度の函館バス路線図‼
引用:函館バス株式会社(http://www.hakobus.co.jp/search/primary_route.html

停留所の地名とそれが地図でどの辺にあるのかさえおぼつかない新入りのボクなどは、ちょっと買物に行くのも大冒険気分です。

道南の住民は距離感が違う?

現在商業の中心地となっている市内北西部は、道南エリアで最も店舗が充実したエリアでもあります。

休日などは市内でも郊外のほう(椴法華や戸井など)をはじめ七飯町・森町などからも買い物に訪れるヒトが多く、札幌圏に比べればはるかに商圏が広いのが特徴です。

「日曜にソフトクリーム食べるためだけに平気で大沼まで行く」というのが函館市民のリアルな声。

大沼まではざっと50キロぐらいあるので、地域住民のフットワークの軽さも特徴と言えるかもしれません。

おわりに

というわけで、函館に来て8か月の元札幌市民の目から見た「函館の特徴と現状」をざっくりとお伝えしました。

「そば屋にはなぜか高確率でラーメンがある、どうかするとソーメンも年中ある」とか「どこに行ってもカツ丼が安い」とか「札幌では見かけない本州発祥のチェーン店がけっこうある」とか、お伝えしたいよもやま話はまだまだ尽きませんが、今回はこのあたりにしておきますね。

診断北海道 48号 2022年2月発行