経済産業局長年頭所感
経済産業省北海道経済産業局長
岩永 正嗣 様
ご寄稿
令和5年の新春を迎え、謹んでお慶び申し上げます。
新型コロナウイルス拡大から間もなく3年。我が国経済は、国際情勢が厳しさを増す中でエネルギーや物価の高騰、原材料のひっ迫など、依然先行き不透明な状況にあります。
一方で、水際対策の緩和や全国旅行支援など、ウィズコロナに向けた各種対策を講じる中で社会経済活動の正常化が進みつつあります。北海道においても、足下では個人消費、観光などで持ち直しの動きが見られ、道経済にとって重要なインバウンド需要の回復も期待されます。
本年4月には、札幌市において「G7札幌気候・エネルギー・環境大臣会合」が開催されるとともに、9月には、「アドベンチャートラベル・ワールドサミット(ATWS)」が、アジアでは初めて北海道で開催されます。
世界から多くの人が訪れるこうした機会は、北海道が持つ魅力を世界に発信する絶好の機会となります。
北海道は、全国と比較して人口減少が早く進むなど構造的な課題に直面する一方で、豊かな自然や生活環境を始め多くのポテンシャル、強みを有しています。
これまで以上に人や資本を呼び込むためにも、北海道が持つ強みを更に磨き上げ、見える化し、発信していくことが必要です。
また、多様化する地域や社会の課題解決に向けては、地域経済を支える自治体、産業・企業を始め、あらゆるプレイヤーが中長期の課題を共有し、それぞれが持つ特徴、強みを活かし、ビジネスの視点からそれらの課題を解決していくミッション志向でのアプローチが鍵になると考えています。
私ども北海道経済産業局では、地域が抱える様々な課題の解決を通して地域経済の活性化に取り組み、多様な個性を活かして社会全体での包摂的成長を実現すべく、以下の取組を全力で推進してまいります。
まず、現下の経済状況に対する的確な対応と挑戦する中小企業等への支援です。
円安影響を含む物価上昇に対応するには賃上げが重要であり、その原資確保のためにも、成長分野に向けた事業再構築への支援、DX戦略策定支援等による生産性向上の推進、適切な価格転嫁に向けた環境整備に取り組んでまいります。
また、物価高騰等の影響で厳しい状況にある中小企業等への資金繰りや事業再生の支援に取り組むほか、若手後継者(アトツギ)が新たな取組に挑戦するアトツギベンチャーの推進、企業に寄り添って経営課題を解決するための伴走支援に取り組んでまいります。
第二に、持続的な成長を可能とする経済社会の実現に向けた取組です。
地域資源を活かした高付加価値ビジネスを創出し、魅力ある持続可能な地域としていくことが重要です。
輸出エキスパート人材を活用した農林水産物・食品の輸出促進や、アドベンチャーツーリズム推進による地域観光産業活性化に取り組むほか、地域課題解決に向けたスタートアップとのマッチング支援、デジタル人材の育成、さらに、宇宙、バイオ、スポーツ関連産業等における新事業創出に向けて取り組んでまいります。
第三に、カーボンニュートラルの実現に向けた取組です。
エネルギー価格高騰を背景として省エネへの関心が高まる中、工場等での省エネ診断による運用改善に向けた取組や省エネ性能の高い設備への更新を支援するとともに、再エネの最大限導入と、エネルギー地産地消による地域活性化に向けた取組、CCUS/カーボンリサイクルを促進します。
また、安全性の確保を大前提とした泊発電所の再稼働、寿都町と神恵内村における高レベル放射性廃棄物の最終処分に関する文献調査等について、地域のご理解とご協力を得ながら取り組んでまいります。
加えて、災害時を含めたエネルギーの安定的な供給の確保に引き続き取り組んでまいります。
関係機関の皆様とともに、ウィズコロナ・ポストコロナの経済社会を切り拓く「強い北海道経済」の実現に向けて職務に邁進いたしますので、より一層のご理解とご協力を賜りますよう、よろしくお願いいたします。
令和5年は「癸卯(みずのとう)」。「癸(みずのと)」は植物の内部にできた種子が大きさを測れるまで大きくなってきた状態を意味すると聞きます。
新たな生命が育ち始め、うさぎのように跳ねあがる、すなわち物事が好転する年です。
本年が皆様にとって実りの多い飛躍の年となりますよう祈念し、新年のご挨拶とさせていただきます。