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診断北海道 50号 2024年2月発行

独立2年目のあゆみ

その他

渡邉 千尋

中小企業診断士 / 株式会社NEXT DECADE CONSULTING

企業の発展と地域の活性化を目指したコンサルティングを行います。人材育成、人材定着、組織活性化を中心にサポートし、企業と人が共に成長できるような支援に全力を尽くします。M&A後の組織統合にも力を入れています。
趣味はピアノで、死ぬまでにショパンピアノコンチェルト1番が弾けるようになりたいので、逆算して練習を始めたところです。

はじめに

中小企業診断士の渡邉千尋です。
令和4年5月に診断士登録と同時に独立し、もうすぐ丸二年が経とうとしています。現在は、中小企業の人材・組織開発を中心とした伴走支援を行っております。
今回は私がなぜ「人材・組織開発」を中心とした支援を行っているのか、また伴走支援を行う際に気をつけていること、手順、気付きなどについてお話させていただきます。

人材・組織開発を中心とした支援を行う理由

私が新卒で安田火災の営業店に配属された2002年、国内損保業界第2位であった安田火災は、日産火災・大成火災と合併し、損保ジャパンという会社に生まれ変わりました。規制緩和や保険料率の自由化、保険業法の改正で、外資系企業の参入が相次ぎ、国内損保業界の再編が盛んになっていた頃です。社内は、通常業務に加えて合併への準備が大詰めとなっており、てんやわんやの状態でした。
本社から合併に向けた様々な通達が毎日何十通も送られてきますが、システムやマニュアル、業務プロセスの統合、職場のレイアウト変更、300以上ある帳票類の差し替え、代理店への説明会、3社分の商品理解など、山程ある統合業務を具体的にどのように進めるのかは、それぞれの支社に任されていました。
統合作業の仕組みづくりは、女性社員が主体となって行っていました。
その時の女性リーダーは、通達が送られてくるたびに、それを読み解き、関係者と打ち合わせを行い、あっという間に仕組みを構築し、次々と課題をクリアしていました。
上司との折衝も、仕事の割り振りも巧み、新入社員にも仕事を任せ、同時に指導も行い、3社の人間に不公平感が生まれないよう配慮もしていました。
リーダーをサポートする雰囲気が醸成され、混乱の時期にも関わらず、人間関係が良好だったことが印象的です。
社会に出た瞬間に体験したPMI(合併後の統合プロセス)で、職場の雰囲気がモチベーションに与える影響、人材育成の重要性、個人の力を最大限に発揮させる組織開発の重要性を肌で感じたこと、リーダーを中心に、チーム一丸となって統合プロジェクトに取り組んだ経験が、「人材組織開発を通して企業の利益に貢献したい」という現在の支援のモチベーションの根源になっています。

人材開発と組織開発

人材開発の定義に、
「組織の戦略の実現や目的達成のために、組織メンバーの必要となるような知識・スキル・コンピテンシー、信念を提供し、これらの獲得のために従業員が学習するプロセスを促進・支援すること」
というものがあります。
この人材開発の定義から、人材開発を実施する以前に
①企業の信念(経営理念、ビジョン、ミッション)が明らかになっていること
②組織の戦略が明らかになっていること
③組織メンバーに必要となる知識・スキル等が明らかになっていること
④従業員が学習するプロセスが明らかになっていること
が必要であることがわかります。
一方、組織開発は、
「・人が集団になると社会的手抜きが生まれやすい
・組織の多様性が高まると遠心力がかかる
という状況において、組織に求心力を高める働きかけを行うこと」
と言われています。
中小企業での支援では、人材開発以前の①〜④をクリアにすることから始まります。

人材・組織開発中心の支援と手順

支援のゴールは「企業利益と従業員満足度の向上」です。従業員一人ひとりが能力を発揮できるような仕組みづくりを通して利益の向上に貢献します。
その基本的な手順は以下のとおりです。
①エンゲージメントサーベイや従業員満足度調査の実施(以降半期に1度程度実施)
②経営理念、ビジョン、ミッション、そこから導かれる戦略、その戦略実施に必要な従業員のスキル・知識、学習プロセスの立案、確認
③従業員全員との面談、財務分析、経営者ヒアリングから導かれる課題の抽出
④課題解決の優先順位の決定
⑤実際の課題解決に向けた取り組み(仕組みづくり)
⑥効果の検証

課題解決に向けた取り組み

手順の①から④は経営陣主体で行います。
⑤は、職場環境の改善、業務プロセスの見直し、システムの導入など、課題ごとにプロジェクトチームを作って従業員主体で話し合いを行います。
従業員は話し合いを通して、対話のルール、ファシリテーションの技術、会議の開催方法などを身に着けていきます。同時に、上司と部下との1 on 1の実施、評価制度の見直し、待遇の改善など、衛生要因・動機づけ要因の両面を満たすための取り組みを行います。
⑥効果の検証には、そのためのKPIを何とするかが重要です。改善の結果を従業員自身が感じ取れる身近な指標でなければなりません。
最終的には、企業利益と従業員満足度がどう改善していくかを見ていくこととなります。

おわりに

日々の支援をとおして、
「企業の信念(企業理念、ミッション、ビジョン)を明らかにすること」
の重要性を改めて感じています。
ゴールがあるから従業員はスタートを切り、ゴールに向かって走ることができます。
「ヒト」が持つ可能性を最大限に発揮できる組織づくりを支援の中心に据えて、企業が発展するための支援を続けていきたいと考えております。

診断北海道 50号 2024年2月発行