経営支援に活用するBI(ビジネスインテリジェンス)ツール
宮井 佑輔
中小企業診断士 / PHARM CONSULTING 代表
「中小企業診断士×薬剤師×IT」データ分析・営業・マーケティングに強みを持っています。主に医療・小売・サービス業の企業で、増収増益に向けた仕組みづくりを行う成果創出型コンサルティングを提供しています。趣味は、バスケ、筋トレ、読書。
目次
I. はじめに
中小企業診断協会北海道会員の宮井です。医療・小売・サービス業(IT含む)業界をメインに成果創出型コンサルティングに特化して活動しております。得意領域はデータ分析・営業・マーケティングです。
突然ですが、皆様は経営支援をする際にどのようなツールで定量データの見える化をしていますか?
今回は、私自身が活用しているBIツールや活用法などについてすこしお話しさせていただきます。
II. BIとは
そもそもBIとは、ビジネスインテリジェンスの略で、企業の各部署がそれぞれに蓄積しているデータを、収集・蓄積・分析・加工し、経営戦略のための意志決定を支援することを指します。
このBIを実現するのがBIツールです。代表的なものに、Microsoft PowerBI、Googleデータポータル、Tableau、Qlink Senseなどがあります。
BIツール活用の意義としては、以下が挙げられます。
- データの収集・蓄積・統合
- データの集計・分析
- データの可視化・ビジュアル化
私は、ドラッグストア店舗運営管理時代はPOSレジデータの集計・分析・可視化、外資法人営業時代はチーム単位での営業データの集計・分析・可視化のほとんどをExcelで実施していたのですが、その後BIツールを初めて知った時「いままでの作業時間は一体なんやったんや…」という絶望とともに、「これからはデータ全部これに繋げれば…」と、効率性と利便性に衝撃が走りました。
中小企業支援においては、無料で比較的平易に扱えるMicrosoft PowerBI、Googleデータポータルなどで十分だと考えています。
現在、実際に私が経営支援に活用しているBIツールはMicrosoft PowerBIです。単発支援では労力が大きくかからない範囲でインスタントにデータを分析、顧問先ではデータ整備から接続、ダッシュボード設計、活用までを一貫して実施し、データを経営に活用する仕組み構築を行っています。
III. 経営支援について
中小企業診断士として独立後、中小企業支援を行っている中で個人的に感じている課題感はザックリと以下の4点です。
- 企業が置かれている現状・戦況を定性・定量両側から正しく把握し、構造化すること
- 構造を踏まえて勝ち筋を見つけること
- 計画・実行・検証・改善を仕組化すること
- 計画・検証・改善に根拠があること
1. 企業が置かれている現状・戦況を定性・定量両側から正しく把握し、構造化すること
社長との対話の中でよく起こることとして、得られる定性情報には事実情報と論理の飛躍と意見が混じるということです。そのため、定量情報が重要であり、定性・定量の両側から正しい状況を把握していく必要があります。
2. 構造を踏まえて勝ち筋を見つけること
例えば、一言で重要目標達成指標(KGI)は売上総利益率5ptの向上や売上高20%向上などがあった場合でも、外部環境を見た時に競合の状況から空いているこのセグメントを取りに行くことで達成するのか、内部環境を見た時に値上げで達成するのか、商品売上構成の変更による粗利MIXで達成するのか、アップセル/クロスセルで達成するのか、もしくは複数施策の掛け合わせなど・・・重要成功要因(KSF) や重要業績評価指標(KPI)は様々想定され、どのルートを通るのが最短ルートで成功確率が高いのかを推定するためには、戦況を構造的に把握しておく必要があります。
3. 計画・実行・検証・改善を仕組化すること
施策においては、初期仮説が上手くいく方が稀だと考えています。
重要なのは、試行回数×試行速度×成功確率です。
計画・実行・検証・改善の仕組化は、試行回数・試行速度・成功確率部分のどれにも関わるものです。
プロセスについては、PDCA(計画/実行/評価/改善)・OODA(観察/状況判断/意思決定/行動)など、事業者にとって確実で早く繰り返すことができそうなものであれば、正直なんでもいいと考えています。
4. 計画・検証・改善に根拠があること
これは、成功確率を少しでも上げるために必要なことだと考えています。
例えば、根拠を持った初期仮説の打ち手が上手くいかなかった場合、根拠がない打ち手に比べ効果的な検証(理想は因果推論で確からしい)が可能になります。その気づきから第二仮説の打ち手、更に第二仮説からの第三仮説の打ち手、のように精度を着実に上げることが必要です。
私は、過去に薬剤師としてのキャリアがありますが、医療における治療アプローチは、検査結果(定量情報)や診察で得られた情報(定性情報)を構造的に把握した上で、根拠を持ち第一選択薬を処方し、経過観察後効果がなかった場合、第一選択薬の根拠と所見を基に第二選択薬を処方する、というプロセスですが、本質的には全く同じだと考えています。
IV. BIツールを経営支援に活用するイメージについて
現在、実際に支援させていただいている中小企業の売上規模は、1千万円から20億円くらいまでです。
よく、BIツールの話で小規模事業者には使えないと仰る方もおられますが、そのほとんどは実際にBIツールを活用した経験・知識がない方や、普段から定量分析自体行っていない方の単なる意見であり事実ではありません。
むしろ私は、売上規模が数千万円の事業者こそ無料のBIツールを活用すべきだと考えています。なぜなら、Excelベースで保有しているデータさえあればBIツールに繋げ、ほんの少しの設計で活用することができるからです。
例えば、安価なクラウド会計およびクラウドレジを使っている小売業であれば、一定期間の試算表データとレジデータをエクスポートすれば、BIツール上で試算表データと売上の内訳である販売データを連結することができ、試算表の売上に対して売上の内訳状況(ドリルダウン)の分析、指定期間(スライシング)の分析まで自由かつ迅速にできるようになります。
また、先ほどの経営支援の4点の課題についてBIツールが果たす役割は、次の通りです。
1. 企業が置かれている現状・戦況を定性・定量両側から正しく把握し、構造化すること
これに関しては、例えば、
あらかじめ、容易に収益状況を詳細に、そして構造的に把握しておくことができる上に、
社長との対話中に、実際にデータを一緒に確認しながら対話を進めることで社長と共に事実情報を認識しながら進めることができる。つまり、個人の感覚だけで話を進めないことが可能になります。
他にも、社長からの「この部門では・この期間では・この部分はどうなっていますか?」といった質問に対して、数秒でデータを表示して説明しながら認識を擦り合わせていくということも実現します。
2. 構造を踏まえて勝ち筋を見つけること
これに関しては、言うまでもありません。
バラバラに存在するデータを統合して把握することでより詳細な状況把握が可能なため、勝ち筋の仮説構築にも効果的です。
3. 計画・実行・検証・改善を仕組化すること
BIツールを毎月の会議で活用することで、先月設定した施策の実施について、実行状況(定性情報)と結果(定量情報)の確認から、上記を踏まえた次のアクションプラン設定まで一貫してBIツールを活用して遂行することが可能で、根拠データをリアルタイムで可視化していくことで合意形成も比較的容易になります。
4. 計画・検証・改善に根拠があること
こちらに関しても、例えば、
施策実施後、売上・売上総利益・営業利益共に上がったとして、各販売状況・原価状況・固定費内訳状況を同時に確認しながら検証していくことができます。
また、他にも、
過去売上データで同様のトレンドを持つA店・B店があったとして、過去3カ月間A店では施策1を実施、B店では未実施であったとき、A店・B店の実績データから介入店と未介入店、介入後のトレンドの変化から差分の差分法により因果推論が可能となり、本当にその施策が有効であったのかを確認するなども可能です。
以上のことから、経営支援においてBIツールを活用することは効果的・効率的です。
V. おわりに
拙文最後までお読みいただきありがとうございます。
今回は、「経営支援に活用するBIツール」という内容でお話しをさせていただきました。
会員の皆様にとって、何かお役に立てるような情報が1つでもあれば幸いです。
私自身、案件を通してまだまだ実験・勉強中であり、成果創出のために試行回数×試行速度×成功確率を上げていきたい所存です。医療・小売・サービス業をメインに活動していますが、その他、製造業における製販データ連携などやってみたいことは沢山あります。
会員の皆様と、情報交換や連携など北海道の中小企業診断士の質的向上・成果創出に係る交流をしたいと考えております。お気軽にお声かけ頂けると嬉しいです。