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診断北海道 52号 2024年12月発行

フランチャイズ店舗経営実践記

2025年1月2日道内各地の活動

菊地 佳奈

広告代理店勤在籍中に、社内新規事業として英語学童FC店を開校しました。
事業責任者として外国人スタッフを含めた採用、人材育成を行い、言葉の壁・文化の壁を乗り越えるべく定期的に面談を行いチームビルディングに取り組みました。
また、数字を見える化して課題解決に取り組んだ結果、開校から1年で生徒数純増全国2位で本部表彰を受けることができました。最近はまっているのはジャーナリングです。

1.社内新規ビジネスとしてのFC開校

2023年4月、社内新規ビジネスとして英語の学童教室を札幌市豊平区に開校しました。
フランチャイズで事業を開始したので、本部のノウハウを活用させてもらいましたが、うまくいかないことも少なくありませんでした。
そんな時こそ、改善点を考えたりデータを収集したり診断士としての学習経験が役に立ちました。フランチャイズ出店の一例として読んでいただければと思います。

2.FC選び

なぜこの事業を始めようと思ったかというと、子どもの教育について不安があったからです。テストでよい点を取ることよりも「好き」や「楽しい」という気持ちを磨いてほしい、「正解」がない問いに立ち向かえる大人になってほしいという想いからです。
ですがノウハウが不足していました。一から作るには時間がかかりすぎるためFCを検討しました。事業を決めるにあたり7~8社と面談を行いましたが、非常に有益でした。
初回の打ち合わせ時間に来なかった人、こちらの意向に耳を傾けない人、まだノウハウが体系化されていない会社も見られました。最終的に選んだのは、企業理念やビジョンに共感できる会社でした。

また、すでに開校しているオーナー企業にもお話を伺いました。
生徒数の推移や利益など、本部から提供された資料との乖離がどのくらいありそうか確認したかったのです。
実際、利益がでるようになるのは本部提供のシミュレーションよりも先になりそうでした。また、それだけではなく有意義な情報を聞くことが出来ました。
例えば、子どもたちは冬にスノトレや長靴を履くので本部仕様の下駄箱だとサイズが合いません。登下校にはスキーウエアを着るため、保管場所に余分にスペースが必要・・・などなど。本部提供資料は、首都圏仕様であったため、積雪地域特有の事情が考慮されていませんでした。細かい部分ですが、この後の教室設計時にも大変役に立つ情報をいただくことが出来ました。
このオーナー企業では、売上管理や送迎関係のツールをいくつか自社開発していました。
後になって判明するのですが、本部提供のシステムは手作業が多く、多くの作業がエクセルや紙媒体管理となっていました。事務コストを下げるため、この会社と契約しサブスクで使わせてもらうことにしました。
実際に事業を行っているオーナー企業に話を聞くのは、メリットしかないと思います。

3.新規開校、売上げは?

オープン時の生徒数はというと、シミュレーションの半分です。
本部のノウハウを使って、販促を行った結果が半分だったときは青ざめました。
開校時点で計画数字を作り直し、いきなり軌道修正することになってしまいました。
そこで「顧客満足度を向上させ退会者を絶対に出さない戦略」へ方針を転換しました。結果、1年後に生徒数純増部門で全国2位となり本部表彰を受けることが出来ました。
他の教室が新規生徒の獲得に注力する中、私たちの教室は退会者を出さないことで生徒数を積上げました。戦略がぴったりはまったときは嬉しかったです。

4.ビジョンの共有

いま振り返ってみて、やって良かったと思うことは、最初にスタッフ全員と目標生徒数を共有したことです。この効果は2つありました。
ひとつめは、生徒獲得のためにスタッフが自主的に動いてくれたこと。体験会に来た子どもたちを楽しませるために、こんな事をするのはどうか?と様々なアイデアを提案するようになりました。
ふたつめは、目標人数達成後の運営を見据えて考える癖がついたことです。子どもたちの移動の導線や、並ばせ方、教室のスペースの使い方、バックヤードの備品管理も将来の生徒数で考えられています。

5.PDCAサイクル

FCの良いところとしてスーパーバイザーから指導を受けられるということがあります。
本部の指示にすべて従うことが最善策ではないということも学びました。
自分たちの教室をより良くするために、必要な助言やアドバイスは受けますが、スタッフの意見も聞き、取捨選択が必要だと思います。
一例ですが最初の販促でコケてから、本部からの提案に加えて効果測定に基づいたデータ収集を行うようになりました。効果的な販促活動や費用対効果の高い媒体を選択するためです。「正解」はないので、自分で考えてPDCAを回すことが重要だと思います。

診断北海道 52号 2024年12月発行