SDGs 経営導入企業の事例紹介
株式会社アドバコム

大橋 功

 筆者を含む診断士グループは 2020 年 3 月、(一社)中小企業診断協会の調査・研究事業として中小企業の SDGs 経営推進をテーマに報告書をまとめました。その中で SDGSs を経営戦略や事業の中に取り入れている全国各地の中小企業を取材し、活動内容を記載しています。

ここでは取材先の 1 社であり、地元札幌でプロモーション支援事業等を営む、株式会社アドバコムをご紹介します。

取材日: 2019 年 11 月 7 日

出所: 「中小企業の SDGs 経営推進マニュアルに関する調査研究」

(中小企業診断協会 調査・研究事業:2020 年 3 月)

https://www.j-smeca.jp/attach/kenkyu/honbu/r1/sdgs-keieisuisin.pdf

1.会社概要

社名    株式会社アドバコム

代表者   代表取締役 臼井純信

本社所在地 札幌市中央区南 1 条

設立    2001 年 3 月

従業員数  19 名

会社Webサイト  https://www.advcom.co.jp/

2.事業内容

 (株)アドバコムは、広告代理店で勤務していた臼井社長が 2001 年に 24 歳で起業設立。子ども向け環境情報紙「エコチル」の発行を主業務に、行政・学校・企業と連携して、社会的な課題を解決するための様々なプロジェクト、イベント開催に取り組む企業である。

 エコチルは「エコロジーチルドレン」の造語で、「子どもたちが環境に関心をもつ機会を作りたい」との臼井氏の想いから 2006 年に創刊され、小学校の教室で毎月先生が児童に配布するユニークな新聞。地元札幌市内からスタート、現在では北海道、東京 23 区および横浜市の公立小学校 2,140 校の教室を通じて 76 万部を無料配布し、その運営を教育関連、公益事業等の企業広告収入で賄うビジネスに成長した。地球温暖化や生物多様性などの本格的な環境問題をテーマとして取り扱うが、色使いをフルカラーに統一しイラストで分かりやすい解説を入れるなど、子供も親しみやすい紙面である。

 エコチル以外にも、スポチル(スポーツ応援情報紙)、キャリチル(キャリア教育情報紙)といった子供向けメディアの発行、工場見学、農業体験など親子での体験型イベントの企画運営を行っている。

3.SDGs をどのように考えているか

  1. 取り組みのきっかけ・考え方
    • SDGs を知ったのは昨年(2018 年)。従来から取り組んでいた環境問題が SDGs 目標に含まれており経営方針に取り入れた。時流に合った取り組みをやっていると自信につながった。また「だれ一人取り残さない」という SDGs の考え方に触れて、従業員への接し方も以前より柔軟になり、時短・在宅などさまざまな働き方の必要性や意義を理解できるようになった。現在正社員 19 名以外に、デザイナーやクリエーターとして国内・海外で 40 名以上の在宅ワーカーが業務委託ベースで働いている。   
  2. 具体的な取り組み内容
    • SDGs を事業領域の拡大につなげている。まず環境だけでなく貧困、社会的格差、少子化など SDGs がカバーする様々な社会的課題にも情報発信の対象を広げるきっかけとなり、「スポチル」「キャリチル」の発刊につながった。また小学生だけでなく、SDGS に関心を持つ高校生、大学生を対象とする出張授業やイベント支援も取り組んでいる。
    • さらにエコチル事業と SDGs を関連付け、自治体や企業と連携してさまざまなイベントを行う「エコチル SDGs プロジェクト」を立ち上げた。札幌市とタイアップして 2018 年から毎年札幌ドームで開催している親子向け環境イベント「環境広場さっぽろ」や、北海道内から善意の文房具を募りフィリピンの子どもたちに届けた「ENPITSU PROJECT」(2019 年 3 月)はその具体例である。
  3. 従業員への浸透
    • もともと環境問題を中心にエコチルで取り扱い、仕事の内容に共感している従業員が多いので、SDGs によりこれまでの活動の意義が再確認できて、やる気の向上につながっているのではないか。読者からの声が月 2,000~3,000 件寄せられるのも励みになっている。
  4. 今後の方向
    • 環境保全に積極的に取り組む子供たちを育むため、エコチル事業をさらに全国・海外に広げていくのが将来の目標。19 名の会社で何ができると思われるかもしれないが、会社の規模は問題ではなく、社外のパートナー(協力者)をどのように広げていくかが重要である。その意味で、SDGs は世界共通の言語になり得るので、当社活動の趣旨に共感するパートナーと組むチャンスは増えると期待している。
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