SDGs領域における協業―花王とライオンの事例

2020年の9月に、花王とライオンがプラスチック問題の解決に向け協業することを発表しました。ライバル企業がタッグを組む異例の展開で、多くの関係者を驚かせました。

というのも、花王とライオンは、ともに日本を代表する消費財メーカーであり、洗濯洗剤市場における「花王・アタック」vs「ライオン・トップ」を筆頭に、さまざまな製品で競争を続けてきたからです。

「競争から共創へ」ともいうべき協業の背景には何があったのでしょうか。

プラスチック循環社会の実現へ

花王とライオンは、プラスチック循環社会の実現を目指し協業を開始しました。これまで両社は、それぞれが包装容器のプラスチックの削減に取り組んできました。それを今回、一段階上のステージに引き上げたわけです。

そもそも消費財メーカーというビジネスは、環境負荷が極めて大きいことが知られています。合成洗剤は主に石油から作られ、包装容器には大量のプラスチックが使用されています。

そうした中で、両社は、消費者の生活に密着した製品を販売するメーカーの責務として、製品のライフサイクル全体を通じた環境負荷の低減を目指し、共にプラスチック問題に取り組むことを決めました。

社会課題に一社単独で挑むのは非現実的?

プラスチック使用量の削減やリサイクルの促進は、社会全体で取り組むべき課題です。各社がバラバラに研究開発や啓蒙活動をするのではなく、協業することによって社会に与えるインパクトを最大化できるからです。

実際に、花王とライオンの担当者は口をそろえて協業の必要性に言及しています。プラスチック循環社会の実現するには、プラスチック回収スキームの構築やリサイクル技術の研究開発を共に行うことが不可欠だからです。

”花王広報部の西田氏は「企業一社では、回収やリサイクル技術の開発に限界がある。そこで同じ目的を持つ他社との協働が必要だと考えた」と経緯を説明する。

同様にライオン広報部の大古氏も「歯ブラシのリサイクルを進めているなかで、当社の課題を認識していた。一社単独ではなく、協働することで困難な課題の解決を目指していきたい」と話す。”

   ― 花王とライオン、競合関係を超えてプラを共同で回収より

   https://www.alterna.co.jp/32951/

「ESGに背く投資は1円たりとも認めない」

花王の長谷部佳宏社長(当時)は、2021年1月の日経ヴェリタスのインタビューで「今後は一円たりとも、ESGに背く投資をするつもりはない」と断言し、環境負荷軽減に対する強い覚悟を示しました。

”長谷部佳宏社長が「今後は一円たりとも、ESGに背く投資をするつもりはない」と断言するのは、業容拡大と環境保全を両立させるとの強い意思があるからだ。”

   ―花王「脱プラ」本気の顔 容器戦略もはや経営の根幹より

   https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGD24BFT0U0A221C2000000/

花王は、日本を代表する消費財メーカーとしてESGを経営の根幹に据えています。2019年には、花王のESG戦略「Kirei Lifestyle Plan」を発表し、プラスチック循環社会の実現に向けたアプローチを強化しています。

一方のライオンも、同じく2019年に「資源循環社会」、「脱炭素」をキーワードに長期環境目標「LION Eco Challenge 2050」を策定しています。これまでにもプラ使用量の削減や、詰め替えの利用拡大に取り組んできました。

このように、花王とライオンは環境負荷軽減のビジョンを共有していました。だからこそ、製品市場ではライバル関係にありながらも、プラスチックリサイクルでは協業することができたわけです。

非競争領域での協業で社会課題を解決

今回の花王×ライオンの協業は、企業の枠組みを超えて社会課題解決にアプローチする代表例といえます。一社単独ではなく、複数の企業が協業することで、ポジティブな社会的インパクトを生み出すことができます。

ESG、SDGsがビジネスの主流になりつつある中で、花王×ライオンのような「非競争領域」における協業は、今後もさまざまな業種・業界で見られるようになってくるのではないでしょうか。

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