SDGsの目標6は、「すべての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保する。」とまとめられています。
日本の水道普及率は100%近くに達し、災害などで断水することはありますが、日常では蛇口から水が出ることが当たり前になっています。
一方、世界的にみると、改善してきているとはいえ、2017年時点で53億人が安全に管理された給水サービスを利用できていますが、22億人が安全に管理された給水サービスを利用できていません。
日本は多くの食料品を輸入していますが、それを国内で生産すると仮定した場合の水(バーチャル・ウォーター)を他国に依存していることになるため、世界の水資源の問題は日本の問題でもあるといえます。そのため、日本も開発途上国への水問題に係る支援を行っています。
では、水の問題は開発途上国が舞台であり日本は支援する立場かというと、そうとばかりも言っていられないのが現状です。日本自身の水道が今後持続していけるかの瀬戸際に差しかかっているからです。
日本の水道の多くは、河川などの水源から取水し、浄水場で基準を満たした安全な水にした後、配水池や配水管などの多くの施設を通って水道利用者のもとに届けるという大規模な上水道システムにより運用さていています。大きな工場で集中的に商品を生産し、膨大な物流網で隅々までその商品を届けるイメージです。
北海道の札幌で見てみると、1つの浄水場が全体の80%の水を作り、6000km(北海道からハワイまでの距離に相当!)もの長さの配水管で水を届けています。
今、私たちの生活や経済活動を支えているこの水道システムの持続が危ぶまれています。
日本の水道設備・施設は老朽化による大量更新時期を迎えていますが、その一方で少子高齢化による人口減少で施設等の更新の原資である水道料金の担い手は減っています。
総務省の公表している2018年度の地方公営企業決算の概要によると、2014年度から2018年度の間、給水人口、配水量、配水能力が減少する一方で、法定耐用年数を超過した管路延長は約1.6倍に増加しています。
人口減少については、国立社会保障・人口問題研究所は2045年に2015年比で北海道では25%減の400万人なると推計しています。
人口減少とともに居住エリアが小さくなるのなら、水道施設の合理化も可能ですが、特に都市部においては居住エリアは小さくならず、人口密度が下がるいわゆる都市のスポンジ化が起きます。そうなると水の需要は下がっているにもかかわらず、需要に見合わない大規模な水道施設を維持していかなければならないというジレンマを抱えることになり、日本の水道が持続困難になっていくことにつながります。
こうした危機感から、国においても計画的な水道施設の更新や広域化によるスケールメリットを活かした効率化を掲げています。
水道は地域のインフラとして、多くの中小企業が支えています。生活だけではなく地域経済においても水道の問題は私たち全員に関わる無関心ではいられない問題です。
こうした中では極論かもしれませんが、今の大規模な浄水場を起点とした施設、管路網という水道システムのあり方そのものを見直す考え方もあるのではないでしょうか。
上川郡の東川町のように、上水道を持たず豊富で清浄な地下水を利用している全国的にもめずらしい例も北海道にはあります。
たとえば大都市であっても、水道の持続可能性と災害対応を考えた際、多様な地域の水資源の実情に応じ、地域毎に小規模で比較的簡易な浄水施設を設けて配水管網も地域内で完結させることで全体としての柔軟性を確保することなどが考えられるかもしれません。
もちろん採算性や技術面、SDGsの他の目標とトレードオフにならないかなど多くの課題があるでしょうが、国際支援や災害に活用されている濾過技術や海水の淡水化技術を積極的に国内の浄水に使っていくことも水道システムの多様化の実現につながるものではないでしょうか。
SDGsではまず未来の目標を設定して、逆算して今を考える手法(バックキャスティング)が採られています。国際的な水問題の支援のみならず、日本の身近な水問題も現在の延長上だけで考えていては解決が難しい面があり、SDGs的な発想が必要になるのだと思います。