三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)は脱炭素化への取り組みとして、「MUFG カーボンニュートラル宣言」を2021年5月17日に発表しました。
その内容を紹介しながら、金融機関の変化からくる脱炭素化への大きなシフトが始まることについてお伝えします。
「MUFG カーボンニュートラル宣言」の2つのコミット
この宣言は、MUFG が(1)2050 年までに投融資ポートフォリオの温室効果ガス排出量のネットゼロとすること、(2)2030 年までに当社自らの温室効果ガス排出量のネットゼロの達成することの2点をコミットすることを宣言しています。
脱炭素を明確に打ち出すのは邦銀で初めてです。(日経電子版2021.5.17)
4つの具体的な行動計画
MUFGでは、コミットメント実現に向けた4つの対応を掲げています。各項目の具体的な行動計画は、今後、策定される予定です。
- ファイナンスを通じた脱炭素化実現へのコミットメント
- 自社独自で進める脱炭素化
- パリ協定に整合的な目標設定と情報開示の拡充・透明性向上
- カーボンニュートラル実現を支える体制の強化
注目は、投融資も対象とすることと、パリ協定との整合から国際的な枠組みへの参加
注目したいのは、①と③です(一方、②と④は自社内での対応)。
①については、コミットする目標に対して、自社の脱炭素化だけでなく、取引先企業への融資や出資といった投融資についても目標に含めていることです。金融機関であるMUFG自体の地球全体に対する脱炭素化効果は極めて限定的です。それを投融資先までに広げるという本気度が感じられます。
③への取組みとして、MUFGは国連機関「Net-Zero Banking Alliance(NZBA)」というに国際的な枠組みに邦銀初での参加をします。参加行は、投融資に係る脱炭素化にむけた目標を設定し、目標の達成に向けた進捗状況を毎年、開示・報告することになります。これまで脱炭素への取り組みが遅いと言われ続けていた日本でもついにグローバル規格での対応が始まります。投融資先には、キャッシュフローだけでなく、脱炭素スコアをみて資金提供の判断をすることになり、当然、銀行自体も脱炭素となる行動にシフトすることになります。
来年度公表の具体的な内容と目標と現中期経営計画との整合性は。
宣言を公表したMUFGでは、来年度にも実質ゼロに向けた具体的な取り組みと、2030年までの中間目標を示すとしています。具体的な取り組みや中間目標がどのような内容となるのか、とともに、今年度より始まっている新たな中期経営計画とどう折り合っておくのか、も注目したいです。
日本のESG投融資もいよいよ潮目を迎える
これまで脱炭素への取り組みが遅いと言われ続けていた日本でもついにグローバル規格での対応が始まります。投融資先には、キャッシュフローだけでなく、脱炭素スコアをみて資金提供の判断をすることになり、当然、銀行自体も脱炭素となる行動にシフトするようです。
三井住友フィナンシャルグループ(SMBC)も気候変動問題への対策を強化し、気候変動に関する SMBC グループの姿勢を明確化のうえ、具体的な行動計画を策定することを表明しています。(2021年5月21日 SMBC ニュースリリース 「気候変動問題への対策強化について」)
また、みずほフィナンシャルグループ(みずほFG)もサステナビリティアクションの強化と表明し、温室効果ガス排出量を計測・開示の国際基準づくりに日本の金融機関で初めて参画を表明しました。
(みずほFG ニュースリリース 2021年5月13日 「サステナビリティアクションの強化について」、7月2日「国際イニシアティブ「Partnership for Carbon Accounting Financials」への加盟について」)
2021年は金融から始まる日本の脱炭素へのシフト
これら日本での脱炭素の流れは、政府の脱炭素ゼロの取り組みを受けての政策転換。
再生可能エネルギーへのシフト、石炭火力への資金供給回避、期限の設定、今後の動きは加速すると思われます。
金融庁の有識者会議においては、政府のカーボンニュートラル宣言の下、大企業のみならず中小企業においても気候変動対応が求められていくことになる、とみており、金融庁に対し、金融機関におけるSDGsの実践等を通じた地域経済の持続的成長に向けた取組みを支援することが望まれるとしている。(2021年6月18日 サステナブルファイナンス有識者会議 報告書 持続可能な社会を支える金融システムの構築)
2021年は金融から始まる日本の脱炭素へのシフトが始まる年になると思われます。準備はいかがでしょうか。