SDGsの自分ごと化?

東京方面の仲間から持ち込まれた相談。これまでCSRや環境問題などに取り組んできた大手企業でも、SDGsが社内に浸透しにくいという話を聞いた。特に若手社員にその傾向が強いとか。日頃の仕事とSDGsが結びつきにくいのかな。何か考えられる?

これまで見てきた世代別調査結果では、SDGsに対する認知や意識は若者の方が強い(調査データの例)と言われてきただけに、いささか腑に落ちない話でした。これがきっかけで、”SDGsの自分ごと化”から発想してみようと個人的に試行錯誤を開始し、思いつきの断片をひとまず書いてみました。話は”自分ごと化”以外にも拡がって、6項目になりました。順に記します。

①マクロからミクロまで、サスティナビリティをイメージする

SDGsの核となる概念はサスティナビリティ。なので持続可能性という観点にフォーカスして考えてみるとしよう。その対象は何がある? 「地球、世界、環境」このあたりは意識されやすい。さらに挙げていくと、「日本、社会、地域」「自分、周囲、生活」「会社、団体、組織」なども。自分の身近な部分でサスティナビリティが侵されかけているというリアリティを感じられるかどうかは自分ごと化の着眼点の1つになるだろう。最近では海外における人権問題も、それが身近な商品のサプライチェーンに関わるということで、SDGsへの気付きを与えるきっかけになりそうだ。

②2030年ではなく2050年くらいを見据える

SDGsは2015年に採択されており、2030年までの15年のうちの40%(6年)が今年で終わる。「残り9年」は感覚的には近未来で、確かに先の話ではあるものの現状の延長線上にうっすら見晴るかすことができるくらいになってはいないだろうか。一方、長期的な目標の類は2030年を超えて、2040年、2050年という時限の設定が増えてきている。なので、今からは2050年などを見据えてサスティナビリティを考える方が有効だろう。

なお、長期的な視点で経営を行う企業の代表例はダノン(「20年後を見据えた経営」)であるが、企業のパーパスを重視しESGを推し進めたファベールCEOが株主提案によって解任された話は、ESGと現状の業績の両立が必要であることを改めて認識させた。これも重要な観点なので見逃さないように記しておく。

③サスティナビリティ経営の実際の当事者は若手社員であることを認識する

就職プロセス調査(2020年卒)を見ると、学生の就職先選択基準は、1番目が「自らの成長が期待できる(56.1%)」 だが、「会社や業界の安定性がある(31.5%)」が4位で、企業・業界のサスティナビリティは上位項目に入っている。会社に迎え入れた若手社員に対して、会社のサスティナビリティを約束していくのは現経営層の責任の一つであろう。

図1.

ただし、現経営層の中には2030年に至る前に表舞台から降りる方も数多く含まれるだろう。一方2015年の新入社員は2050年には50代後半であり、会社のサスティナビリティを実行する当事者になっていく人材である。そう、当事者は彼らだ。その実感を持ってもらうための啓蒙機会、自社の未来を考える場への参画機会の提供とモチベーションのサポートなどを仕組み化することが必要だと思われる。

この先、企業人材の流動化、副業などのマルチロール、リモートワークなど企業と社員の関係が大きく変化していくことも含め、主体となるのは(今の)若手社員である。

④2050年のあるべき姿を定義する(バックキャスト・アプローチ)

と言っても30年後を予測するのは難しい。自らの属する業界だけではなく、俯瞰的な視点が必要なだけに、外部のデータや言説を参考に整理と検討をしていくことになる。

例えば、日本の国際的ポジションも変化の可能性があるようだ。2050年のGDP予測ランキングでは、日本は第5位の見込み。第4位はインドネシア、僅差の第6位にはブラジルという顔ぶれ(出典:落合陽一著『2030年の世界地図帳』)。随分変わるなあという印象を禁じ得ない。

図2.

次いで検討手順として、[マクロの予測に基づくPEST分析] → [業界環境の予測と3C分析]が必要。今の自社の事業や取引に関するルールの変化の可能性には注意がいる(顧客の取引先選定条件も変わったりする)。リスクと機会の評価。これを踏まえた上で、自らの会社は何のための会社かという存在目的(パーパス)と整合性の取れた、2050年における担うべき役割、提供する価値を定義する(ムーンショット)。そこから逆算(バックキャスト)で、ムーンショットの実現に至る5年ごとの目標を定めていくようなイメージになるのではないだろうか。

⑤足下の「今の事業」の改善も考える(フォアキャスト・アプローチ)

ただし、企業の今を支えている現在事業をないがしろにしてはいけない。若手社員も含めてリアリティを感じるのは現在の事業であり、その中に潜む課題である。そのため、今の主力事業の延長線(フォアキャスト)上でのバリューチェーン分析を行うことも重要で、課題の抽出と改善策の検討を行い、それに関わるSDGsのゴール/ターゲットを規定、その改善がサスティナビリティに寄与することを理解・共感できるようにしていく。このプロセスは『SDGコンパス』に書かれている内容をなぞる形になる。

このプロセスを経験することで、④で触れたバックキャスティングにおける5年ごとの目標にSDGsのゴール/ターゲットを設定しやすくなるはず。自分の経験世界にSDGsをあてはめることで、未来の仮定の世界にあてはめる想像力が働きやすくなると思われる。

⑥企業のサスティナビリティのマネジメントに取り組む

思うに2050年の未来予測は数年ごとにアップデートしていく必要がある(徐々に解像度が上がっていく)。定義したムーンショットが再定義されるケースも起こりえる。

また、多くの会社では、⑤のフォアキャスト・アプローチと④のバックキャスト・アプローチが接続せず、併走状態になると予想する。

図3.

従って、このフォアキャストアプローチとバックキャストアプローチをどう組み合わせるか、どのタイミングでMoonshotに向けて切り替えるか。またはリソース配分をどう変えて、会社を2050年型へトランスフォームさせるか。これらが経営層の重要なマネジメント課題になると予想する。

(現状とりあえずここまで)

まとめ方と使い方

これで総てではないですし、まだまだスケルトンの段階ですが、思惑としては(このような)骨子に肉付けをし、形式化を模索したいと考えます。その一つとして若手社員向けのワークショップ用で使えるツール等に仕立てられないかと。素材としては生硬なので、仕立て方がポイントになりそうです。

なおこの話に出てくるような会社は、どこかに相談して今のSDGs関連のプログラムを実施しているケースが多いと見受けられます。なので関わり方については未知数です。想像するに、社内のSDGsアクションに対するセカンドオピニオンという役割もありえるかな。それはそれで面白いかも知れません。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

PAGE TOP