私の住む北海道はバードウォッチングに格好のスポットが数多く存在し、世界的にも注目され多くの愛好家が静かに来訪し、その経済効果もあり観光による地域振興の材料にもなっているようです。バードウォッチングなど自然環境と接する活動はSDGsにも反映されるものがあるように感じています。
グリーンスワン
しかし、気象の世界では、遭遇したくないバードウォッチングがあります。
これまでも、気候変動問題について、環境保護団体や国際的な環境機関から大きな警鐘を鳴らされたことは幾度もあり、ますますその頻度は増加し、提言も緊急性を帯びているのが現実です。さらに今や金融を制御する国際機関から猛烈な危機感が示されているのが、「グリーン・スワン」です。
2020年1月、今度は国際決済銀行(BIS)から「グリーン・スワン 気候変動に時代における中央銀行と金融安定」というレポートが公表されました。
環境に関する出来事を想起させる「グリーン」をもじって、気象変動に起因する金融危機を「グリーン・スワン」と名付けたようです。経済のグローバル化がほぼ極限まで拡大している国際金融の世界では、ひとたびリスクが顕在化した場合には、その影響の範囲は局所的にとどまることはなく、広範囲にかつ短時間で広がる特性を持っていますが、このような金融危機を回避するために何をすべきか、様々な金融機関の行動に変化が発生しているようです。
「グリーン・スワン」の語源になるのが「ブラック・スワン」です。
17世紀にオーストラリアで発見された黒い白鳥で、発見当初ヨーロッパでは衝撃が広がりました。「スワンは白い」の常識が否定されました。(後に、全く別の種類と分析され、突然変異ではないと判明)これが生物学的な整理で、実在の美しい野鳥です。
もう一つの経済・金融用語として意味を持っています。それが一躍注目されたのが、2007~2008年にかけて発生した国際的金融危機いわゆる「リーマンショック」の時です。この時「あり得ないと考えられていたことが突然発生すると、影響は強さを増す」「常識外に珍しい事象・事態」「発生した場合は、破壊的影響が発生し大きな損害につながる」「発生する前にその影響を具体的に把握することが困難」の意味で「ブラック・スワン」は、これまでの経験やデータからは予測できないような金融危機が起きる意味となったのです。
PRIとPRB
この「ブラック・スワン」の出現の直前の2006年に「国連責任投資原則(PRI)」が公表され、投資姿勢の見直しを強く求めています。投資にあたって売上高や利益などの財務指標だけでなく、環境(environment)、社会(social)、企業統治(governance)など財務指標には表れにくい問題への取組状況にも配慮すべきだとする世界共通のガイドラインです。責任投資原則に基づく投資は、機関投資家のリスクを排除し、企業の持続的成長や中長期的収益につながるとの概念に基づいており、国連は世界が2030年までに達成すべき17の環境や開発に関する国際目標(SDGs)に密接に繋がることになります。この達成には各国政府や非政府組織の協力だけでなく、機関投資家の協力も欠かせないとの思惑がこのころから芽生えていたようです。
そして2019年、「グリーン・スワン」発表の前年には「国連責任銀行原則(PRB)」が制定されています。これはESGを投資の領域にとどめず、銀行融資に展開を求めるものです。
PRIでは投資家が対象とするのは上場企業のプレッシャーを期待していますが、中小規模の事業者は投資の対象ではありません。そこで、非上場や中小規模の事業者に働きかけを可能にするため銀行の融資姿勢に変化を求めPRBに繋がっていきます。
金融機関は一般事業法人と違い銀行法により決算期は3月に決められています。このため毎年7月頃に通期の経営内容資料が公開されます。ここ数年、この開示の中で自社のSDGs宣言が急速に増えています。中身をみれば、どこか横並びで羅列的な表現がまだまだ主流のように見えるものの、事業者と情報共有する機会の多い金融機関がSDGsに視線を向けることは望ましく映り、繋がりのあるそれぞれの取引先や営業する地域での関わりの強化を期待するものです。
ご存じの通り日本の事業者の99%が中小規模事業者であり、その方たちが地域経済・地域社会を担っていることから、地域のサステナビリティ、SDGsの達成に向けては中小規模事業者の覚醒が不可欠です。そこへの金融機関の役割は非常に大きなものがあると考えます。
議論が、鳥類の話から始まったので、飛びすぎたかもしれませんが悪しからず。
追伸
北海道は世界中のバードウオッチャーが生涯一度は観察したいベスト3が、同じ地域で観察できる世界でもまれな資源を持っています。このベスト3とは「オオワシ」「シマフクロウ」「タンチョウ」です。