カーボンニュートラルはサスティナブルと言えるのか

最近、カーボンニュートラルという言葉をよく耳にしますが、皆さんはどのようなものかご存じでしょうか?

カーボンニュートラルとは「温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させること」を意味します。
要するに産業活動で排出している二酸化炭素を、植林・森林管理等で吸収してプラスマイナスゼロにしましょうということであり、温暖化を防ぐための世界的な取り組みとして注目されています。

本日は、このカーボンニュートラルについて、二酸化炭素を多く排出しているであろう電力事業の視点から、本当にSDGsの考えとマッチしているのかを考えていきたいと思います。

そもそも電気はどのように私たちのもとに届いているか

まずは、知らない人も多いと思いますので、そもそも電気はどのように私たちもとに届いているかを説明します。

電気は下図のように発電所から変電所を通って、皆さんの家庭に送られています。
この電気は、今この瞬間に作られたものがまさしく今使われており、基本的には貯めることができません。

そのため、需要(電力の消費)に合わせて、火力発電所などで調整を取っています。
このバランスが崩れると、記憶にも新しい北海道胆振東部地震の時のようにブラックアウトが発生してしまいます。

カーボンニュートラルに向けて今、政府は何をしようとしているか?

政府の動きとして一番大きいものは、電力広域的運営推進機関で主催している「広域連系系統のマスタープラン及び系統利用ルールの在り方等に関する検討委員会」で議論されている「再エネ適地である北海道から、大消費地の東京へ直接電気を送る」シナリオです。

北海道は人口が少なく産業も少ないことから系統規模が小さいため、せっかく風況がいいにも関わらず、再生可能エネルギーでも大規模である風力発電を受け入れることができていません。

この状況を解決するために、北海道で発電した再生可能エネルギーを直接東京へ送ってしまおうといったプロジェクトが進められようとしています。

このプロジェクトを実現するためには電気の流通の仕組みを大きく転換させる必要がありますが、
現在の系統構成は、既存の原子力・火力発電所を前提としたものになっているため、一筋縄ではいきません。

また北海道から本州へ直接送電するためには直流送電技術という最新技術が必要であることから莫大なコストが発生し、そのコストは皆さんの電気料金を値上げした分から徴収されます。

 

カーボンニュートラルで恩恵を受けられる企業はどこか?

 最近では再生可能エネルギー(太陽光・風力)のような不安定電源が接続されるようになったので、需要(電力の消費)だけではなく、再生可能エネルギーの発電状況も考慮して電力の調整をしなければならなくなっています。

再生可能エネルギーは、二酸化炭素や有害物質を排出しないといったクリーンなイメージがありますが、電力の需給バランスを取る上では、非常に厄介な存在です。

一方で、火力発電所は、温暖化の観点から目の敵にされる存在になってしまっていますが、安定的に発電する事が可能で柔軟に出力調整ができるため、電力の需給バランスを取る上では頼りになります。

また、火力発電所はこれまで主に国内の企業で建設・運用をしてきたため、国内にノウハウが蓄積されていますが、再生可能エネルギー関連で主要なプレイヤーとなるのは海外の企業ばかりです。

例を挙げると、
 風力発電の主要企業:GE、Siemens Gamesa、Vestas
 蓄電池の主要企業 :GSユアサ、LG化学、サムスン、BYD、etc,,,

といった具合に蓄電池で辛うじて、国内企業ではGSユアサが奮闘するくらいで、あとは海外企業が幅を利かしている状況です。

このままでは、海外企業が日本の再生可能エネルギー市場を席巻し、国民の電気料金の負担が大きくなる割には、国内経済の発展には繋がらない可能性があります。

さらには、そもそも不安定な電源であることから、電力を安定的に供給できなくなってしまう可能性も高まります。そういった電力の供給が不安定な社会は果たして持続可能な社会と言えるのでしょうか。

カーボンニュートラルについて、確かに環境面ではサスティナブルかもしれませんが、経済面から見るとサスティナブルな設計になっていないように感じます。

もっと多面的な視点で本当のサスティナブルを実現するような施策を打てるように、1人1人が声を上げていく必要があるのかもしれません。

 

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