SDGsにつながるウェルビーイング経営

 ウェルビーイング(Well-being)という言葉をご存知でしょうか? 心身ともに健康で社会的にも満たされた幸福な状態のことです。社員の幸せを重視する「ウェルビーイング経営」が注目されており、「はたらく幸せ」を社員が感じる会社ほど、組織のパフォーマンスや売上高の増加率が高いという調査結果も出ています(*1)。

 ウェルビーイング経営に取り組む企業は、SDGs目標8:「働きがいも経済成長も」を実践しているといえますね。

ウェルビーイングに影響する要因

 まず、どのようにすれば社員が幸せを感じるか考えてみましょう。働く人の幸せ・不幸せの実感度について分析した「はたらく人の幸せに関する調査」によれば、幸せ感を高める要因として以下の7つがあげられています(*1)。
①リフレッシュできる ②自己裁量が効く ③自己成長できる ④役割を認識できる 
⑤他者から承認される ⑥チームワークがある ⑦他者へ貢献できる
これらの要素が多いと社員が感じるほど、幸せ感が高まります。

 反対に不幸せ感を増す要因は以下の7つです(*1)。
①不快な職場空間 ②オーバーワーク ③理不尽さ ④自己抑圧 ⑤評価に不満 
⑥協力不全 ⑦疎外感
さらにこれらの要因は、「心身の健康に関するもの」、「自分の価値に関するもの」、「人間関係に関するもの」の3つのグループに分類できます(図表1)。以下、それぞれについて事例をご紹介します。

ウェルビーイング経営の事例

1.心身の健康

 福利厚生の一環として、多くの企業が健康診断や予防接種などへの補助を実施しています。また早帰り日でオーバーワーク感を減らす、オフィスのレイアウトや色調を工夫して職場環境を快適にする、ハラスメント相談窓口の設置により理不尽な行為を早期に発見する、などの取組みもよく聞きます。これらに共通するのは「不幸せ感を減らす」効果です。一方「幸せ感を高める」取組みとしてはこのような事例があります。

 東京西サトー製品販売(株)(小売業:東京都立川市)では「バースデー休暇」の制度を設けて、社内の共有カレンダーに社員全員の誕生日を表記し有給休暇取得のきっかけとなるようにしています。この取組みはリフレッシュ感を高めるとともに、「誕生日おめでとう」のメッセージ交換を通じてコミュニケーションの緊密化にもつながっています(*2)。

2.自分の価値

 社員が、自分の活躍できる役割、周りや会社からの評価、新たな学びの機会などを感じられる取組みがこれに該当します。

 例えば会社の経営方針として再生エネルギー利用、資源リサイクル、地域活性化など社会的課題の解決につながるSDGs目標に取り組み、その成果が評価されれば、社員は仕事にやりがいを感じるでしょう。会宝産業株式会社(中古自動車部品の輸出・販売:金沢市)は、環境にやさしい自動車のリサイクル技術を開発し、2018年の「ジャパンSDGsアワード」で外務大臣賞を受賞しました。このように外部から客観的に評価されることで、社会に貢献し誇りを持てる仕事だと社員が実感し、30%程度もあった離職率が6~7%まで低下したといいます(*3)。

3.人間関係

 チームワークや他者への貢献を促し、組織内でのバラバラ感や疎外感を減らす取組みです。興味深い事例としてこのようなものがあります。

 (株)弘(焼肉店運営:京都府京都市)は「弘(=ヒロ)リンピック」と銘打って、アルバイトスタッフも含めた全社員参加の運動会とバーベキュー大会を年1回開催しています。この日は社員がホストになってアルバイトスタッフをもてなし、日頃の業務をねぎらう点が特徴的であり、社長以下全社員が集まるコミュニケーションの場としても活用されています(*2)。

 また(株)Enjin(PR支援サービス:東京都中央区)では「オハナ旅」という制度を作り、社員同士で旅行に行く場合に、年間最大5万円を会社から補助しています。社員間の交流を活発にして人間関係を育むことが目的で、部署をまたいで先輩・後輩、あるいは同期同士での旅行で利用する社員が多いとのこと。単に経済的に助かるというだけでなく、新たなチーム内の結束を固めたり、旅行という共通の目標をもって仕事に頑張る励みになっています(*4)。

 ウェルビーイング経営は、社員の「幸せ感」を高め働きがいを感じさせる点で、SDGsとも密接につながっていることがわかります。心身の健康、自分の価値、人間関係に留意した取組みにより職場の活性化に役立てていただければ幸いです。

【出所】 
(*1)「はたらく人の幸せに関する調査 結果報告書」(パーソル総合研究所、慶應義塾大学 前野隆司研究室:2020年7月)
(*2)「健康経営優良法人(中小規模法人部門)取り組み事例集」2020年、2021年(経済産業省: 2020年3月、2021年3月))
(*3) 「自動車リサイクルで資源循環型社会に貢献「会宝産業」」(J-Net 21)
(*4)「幸せな会社の作り方」(本田幸大 扶桑社:2021年2月)

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