SDGsはこのまま社会に定着するのか

近年、各企業がこぞって環境対応や社会課題の対策に乗り出しており、SDGsが「流行りもの」であった段階を超えて、本格的にSDGs社会へ向けた取り組みが始まっているなと感じます。

SDGs経営は高度なバランス感覚が求められる

SDGsなどの取り組みをしている企業は、「ESG投資」すなわち「環境(Enviroment)」「社会(Social)」「ガバナンス(Governance)」の観点を重視する投資の対象となるなど、
顧客だけでなく投資家からの注目度も高まっています。
しかしながら、世間がSDGsへの取り組みを評価する一方で、フランスの大企業ダノンでは、「ESG(環境・社会・企業統治)経営」の旗振り役を務めてきたCEOが株主から業績不振の責任を問われて解任されています。
これは、ESGやSDGsへの取り組みは重要であるし評価もするが、業績不振の「言い訳」や「煙幕」としてSDGsやESGを使うことは許さないという株主からの意思表示となりました。

セキュリティを高めれば利便性が下がり、環境対応をすればコストがかかるように、
「ひとつのゴールはもう一つのゴールの障害になる」ことがあります。
それでも、SDGsは普及期を超えて成熟期に移っており、目を背けることができなくなった今、経営者はより高度なバランス感覚で事業を行う必要が出てきたということだと思います。

それでも企業がSDGsに取り組む理由

それはなぜか、多くの人々(これからさらに増えていく)がSDGsを求めているからです。
企業は何のために事業を行うか。
ドラッカーは「利益をあげること」と「従業員の幸福を実現すること」「地域社会や国家へ貢献すること」と述べています。

「利益をあげる」には「顧客が求める商品やサービスを提供する」ことが必要です。
「従業員の幸福」のためには、「誰一人取り残さない制度設計や評価制度」が必要です。
「地域社会や国家への貢献」のためには、「社会(Social)」が求める取り組みが必要です。

顧客や社会がSDGs的考え方を求め始めているとするならば、
必然的に今後多くの企業がSDGs的視点を取り入れた経営を行うでしょう。

すでに好循環のサイクルに突入している

私は既にSDGs定着への好循環のサイクルが回り始めていると感じます。

①同等の商品サービスの競合他社がいた場合、差別化要素としてSDGsを積極的に
 活用する企業がでてきます。
②同業他社や競合企業がSDGsを活用することで利益をあげたり、
 地域への貢献度を高めているのであれば、相対的魅力を維持・向上させるため
 自社でも「SDGsを活用しよう」と考えます。
③SDGsに取り組む企業が増加します。
④消費者がさらにSDGsに触れる機会が増え、エシカル消費が増加します。
⑤それ応えるように、さらに企業はSDGs的取り組みを活発化させます。

このように、SDGsが社会に定着するための好循環が始まっていると考えます。

一方で・・

SDGsの取り組みは必須と申し上げましたが、一方で「まったくSDGsに興味がない層」や「むしろSDGsに反発する層」も必ず存在します。
製品やサービスのバックボーンは問題ではなく、とにかく安いものを求める顧客がいるのも事実です。例えば街のスーパーや100円均一などで、「SDGsに取り組むのですべての取り扱い商品の価格が上がります。」となれば顧客が離れてしまう可能性も大いにあります。
SDGsに取り組むことが必ずしも顧客満足を高めることになるわけではないということにも、実は注意が必要であるということです。

「SDGsネイティブ」や「エシカル消費」の増加

最近では小学校の夏休みの自由研究や授業でSDGsを取り扱うことがあるそうです。
本屋でも子供向けのSDGs関連本が多く目に入りますし、「SDGsネイティブ」の世代が確実に増えていくことでしょう。

アメリカのマクドナルドでは植物由来の代替肉バーガーが提供されるようになっていますし、日本でもレジ袋を辞退する人が増えたり、フードロスを意識して賞味期限が近い商品を購入したりと、一般消費者レベルでの「エシカル消費」が確実に増えています。
多くの消費者は企業にSDGsへの対応を求めているということだと言えます。

消費者の「エシカル」な消費行動が今後、より浸透していくならば、企業が選ばれ続けるためにはSDGsの活用は「必須」であり、また、製品やサービスが横並びになっている現代で他の企業が付加価値として環境対応を進めるのであれば、自社の相対的魅力を維持するためにも「必須」となります。

SDGsの考え方が普及・定着しつつある現代社会では、「この商品を買いたい」ではなく
「あなた(貴社)から買いたい」と思わせることが重要になるということです。

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